(400)床のリフォームになぜコンポジションタイルを選んだのか
さて、長かった熱海のDIYも最終盤。今回から床のリフォームの話をいたします。
物件購入時には全面フローリングが張られていました。
かつてサンルームだった場所だけ黒く塗られていたりして、とてもそのまま残せる状態ではなかったので何らかのリフォームを施す必要がありました。
この床の上から張ったのが表題の「コンポジションタイル」です。
「コンポジションタイル」という言葉を初めて聞いたという方も多いでしょう。
のちほど詳しく説明しますが、ひとまずはフロアタイル(塩化ビニルでできた薄い床材。いわゆる「Pタイル」)の一種だと覚えておいていただければけっこうです。
この「コンポジションタイル」にたどりつくまでいろいろと紆余曲折がありましたので、今回はその経緯を詳しく書きますが、「んなことはどうでもいい。コンポジションタイルって何よ?」という方は最後のチャプターまで読み飛ばしてくださいませ。
■床を躯体あらわしにするのはハードルが高い
再三書いてきましたが、熱海のマンションはもともと躯体あらわしになっている部分も多かったため、コンクリートの質感を活かしたグレイッシュなインテリアを目指してきました。
となると、既存の床をはがして躯体あらわしにする、ないしは、床に新しくモルタルを敷くという方法が考えられます。同じ素材でそろえるとインテリアに統一感は出しやすいので、躯体あらわしの室内を作りたい人には順当な選択肢に思えます。
しかし、この方法には「既存の床を解体する手間と費用がかかる」「モルタルを敷く施工費用もそれなりに高額になる」「とてもDIYでできるような施工方法ではない」「冬場に足下が冷えるので生活空間には不向き」などなどデメリットが多く、僕は早々にあきらめました。
なお、最近はモールテックスという素材も人気ですが、こちらも施工費用は高額なうえDIYにも向かないので却下しました。
■コンクリートエフェクトペイントを塗る根性もない
続いて頭に浮かんだ選択肢が、既存のフローリングの上から「コンクリートエフェクトペイント」を塗ってモルタルの床っぽく仕上げること。
以前もご紹介した「コンクリートエフェクトペイント」は異なる色味のグレーを塗り重ねることでコンクリートの独特の質感に似た表情を生み出すことのできる面白い塗料です。
洗面所の床は「コンクリートエフェクトペイント」を塗って仕上げました。
丁寧に作業してやればうちっぱなしのような床を作ることができます。
ですが、重ね塗りをくりかえすので塗装にかなりの労力を費やさねばならないのが難点です。
下地の継ぎ目をパテで埋めてやすりがけして平滑にする手間や、
かなりの回数の重ね塗りをおこなう手間を考えると、洗面のような狭い場所ならともかく、広いリビングに「コンクリートエフェクトペイント」を塗るだけの根性は僕にはありませんでした……。
■DIYでリフォームしやすい床材といえばフロアタイルだが……
そんなわけで、結局、既存の床に簡単に上張りできて、値段も種類も豊富な塩ビのフロアタイルを検討してみることにしました。
世田谷のマンションではサンゲツの木目柄のフロアタイルが定番となっており、以前、「日刊Sumai」でも記事を書きました。まだ配信先に残っていたので興味がある方はどうぞ。
昨年、マンションのリフォームではヘリンボーン模様のフロアタイルを試したこともありました。
薄くて施工性が高くリーズナブルなのが特長ですが、デザインもあなどれません。
木目のデザインもけっこうリアルで、パッと見には本物の木かと見紛うクオリティです。
ラインナップの中には今回の部屋に使えそうなモルタル風のデザインもありました。コンクリートのような模様はかなりリアルにプリントされているのですが、
表面のドット感というか、ツブツブ感が気になります。模様がわかりやすい木目の場合とちがってモルタルの表面の質感は再現しづらいのかもしれません。
もう少し他に選択肢はないものかと考えていたときに出会ったのが「コンポジションタイル」と呼ばれる床材でした。
■「コンポジションタイル」とは単層構造のフロアタイルのこと
長くなりましたが、ここでようやく「コンポジションタイル」の登場となります。
実は、「コンポジションタイル」もフロアタイルの一種なのですが、今しがたご紹介したタイプとはかなり毛色が異なります。
木目柄や石目柄がプリントされたフロアタイルは、正式には「複層ビニル床タイル」(「ホモジニアスタイル」とも)と呼ばれるそうで、文字どおり素材の異なる複数の層が重なって構成されています。
断面をよく見ると<柄模様に合わせたエンボス加工がなされた透明な層>や<柄模様のリアルな表情がプリントされた層>、<下地となる層>などが多層的に組み合わさっています。複層的な構造だからこそ、本物の木材や石材に近いような表情を演出できるというわけですね。
一方、「コンポジションタイル」はというと表面から裏面までまったく同じ材質でできている単層構造。
裏返しても見た目は変わりません。
断面をよく見てみても素材が均一なのがわかります。
ひとことで“フロアタイル”とくくられますが「コンポジションタイル」は「複層ビニル床タイル」とは構造からしてまったくちがうのです。
■「コンポジションタイル」を世田谷のマンションに採用してみた
「コンポジションタイル」はその構造の単純さゆえ、複雑なデザインを表現することはできないのが弱点です。
模様といっても筋状や雲状のシンプルな柄になります。
こちらは「コンポジションタイル」の代表的存在である東リの「マチコV」。1963年発売(!)のロングセラー商品です。いわれてみると、昔の学校や会社、役所などの床ってこんな感じだったような気がします。「Pタイル」という呼び名にはどことなく古臭いイメージが漂うのもそのせいかもしれません。
実際、いつもお世話になっている現場監督のKさんに「コンポジションタイル」について聞いてみたところ「使った記憶がほとんどとないんですよね」との返答が。どうやら現在では一般的な住宅のリフォームにはあまり使われないようです。
しかし、そうした背景を横に置いて「コンポジションタイル」を眺めてみると、個人的には安っぽさやチープさは感じません。むしろ、あくまで木や石のコピーを追い求める「複層ビニル床タイル」よりも、単層構造ならではのシンプルな構造とデザインが、かえって潔く見えました。
モルタル調の「複層ビニル床タイル」(左)と「コンポジションタイル」(右)であれば、後者のほうがしっくりきたのです。
そこで、試しに世田谷のマンションで「コンポジションタイル」を採用してみることにしました。
直感したとおり、床一面に張っても鑑賞に堪えうる素材でした。
この部屋は天井を躯体あらわしにしたのですが、コンクリートむき出しのラフな天井とも違和感なくマッチしていると思いました。これは熱海でもいけそうだ、と。
気になるのは施工の難易度ですが、現場で話を聞いてみたところ、既存のフローリングの上から張り重ねるのも比較的容易だとのこと。DIYに挑戦する気も湧いてきました。
次回は、具体的にどんな「コンポジションタイル」を選ぶのかについて考えます。