(548)30平米の狭小賃貸マンションに施した工夫を紹介する
夏の到来を前にマンションの一室が空室になりました。
お住まいだった期間が3年間と短めだったことを差し引いても驚くほどきれいな状態でありがたいかぎりです。猛暑の賃貸募集はなかなか難しいので「秋までに決まればいい」くらいの気持ちで臨もうと思っています。
前回、さまざまな本を題材にコンパクトマンションについて考えましたが、その具体例としてこのたび空室となったお部屋をごらんいただきます。この部屋については「壁や床に柄や装飾を盛り込みつつ、モノトーンで落ち着いた雰囲気にまとめた」部屋として以前にも記事にしました。
間取りはこんな感じです。
以下に掲載する写真はすべて3年前の完成当時、カメラマンの邑口京一郎さんに撮影してもらったもの。30平米というコンパクトな空間を活用すべく試みている工夫を中心に室内をご紹介します。なお、それぞれの写真に付した番号は末尾の間取り図に記された数字と対応していますので参照ください。
■ひとつの空間が複数の用途を兼ねる間取り
うちのマンションには廊下といえる部分がほぼなく、ムダの少ない間取りになっています。内見に来た方のほとんどが「30平米にしては広く感じる」とおっしゃってくれます。
たとえば、洗面の前の空間は脱衣所を兼ねています。頭上のロールカーテンを下ろせばざっくり視線を遮ることもできるようになっています。
右に見えるドアの中はトイレ。
リフォーム前はこのドアも向かって左=脱衣所側についていましたが、トイレ内のスペースを広くしたいという思いもあって正面に移設しています。
こちらは玄関です。左側にあるのがキッチンカウンターを兼ねたシューズボックスです。
基本的にはキッチンに置ききれない調理家電を置いたり、料理の際の作業スペースにしたりすることを想定していますが、入居者さんによっては植物を飾ってカギ置きのコイントレーを置いたりして玄関スペースの一部としてお使いの方もいらっしゃいます。
これは結果論なのですが、極力、建具を減らしてゆるやかに空間を仕切るようにした結果、「どっちにも使えるスペース」がいたるところにでき、住む人が空間を使う自由度が上がったように思えます。
六畳のリビングと三畳の寝室(サービスルーム)の間には、もともと下がり壁とアコーディオンカーテンがありましたが、どちらも撤去してひと続きの空間にしました。「どうしても間仕切りたい」という方のために天井に直付けのカーテンレールは設けましたが、使っている人はほとんどいません。
■使わないときはしまっておけるアイテムを活用する
限られた空間を活用するうえでは、折りたたみ式の収納アイテムを活用するのも有効です。
こちらは洗面。右下に見えるのは以前もご紹介した折りたたみの小棚です。
使うときにだけ開くことができ、不要なときはたたんでおけます。
うちは洗面兼脱衣所が狭いので、化粧をするときもお風呂に入るときも物を置くスペースに困ります。かといってスツールを常駐させるのはムリ。というわけで、折りたたみ式の棚をDIYしてみたのでした。
リビングの一画にも折りたたみ式の机を備え付けてみました。
細田製作所の「壁掛け折りたたみ机 タナプラス」です。以前、「ESSE online」で記事を書きましたので詳しくはそちらをどうぞ。
この部屋を工事した当時はコロナ禍の最中だったので、室内にワークスペースがあれば便利だなという思いで設置しましたが、ドレッサーや子どもの勉強机にもできそう。
頭上にはランドリーロープも設置しました。
うちの物件では定番の物干しワイヤー「pid 4m」(森田アルミ工業)です。
使わないときはワイヤーを格納しておけるので見た目的にもほとんど邪魔になりません。
■デッドスペースを収納として活用する
デッドスペースになりがちな壁を上手に活用するのもコンパクトな物件においては大事です。
洗濯機の上がガラ空きでもったいないと考えてオープンな収納棚を取り付けてみました。洗剤や柔軟剤はもちろん、ストックの収納にも役立ちます。
玄関のすぐ上にもコの字型のオープン棚を置きました。うちは靴箱がやや小さめなので、その延長で使ってもらえればと思って設置したのですが、飾り棚として使っている入居者さんもいらっしゃいます。
もちろんトイレの壁もムダにできません。こちらは建具つきの収納棚で見た目すっきりに仕上げました。
そして、うちのような築古物件においてデッドスペースになりがちなのが押し入れです。
現在は、建具はつけずにロールカーテンを設置していて、
開くと、中はこんな感じになっています。
かつて押し入れだった時代には引き戸が設置されていましたが、
引き違いだと、建具が重なる中央の部分にしまったものが取り出しづらいのがストレスでした。
ロールカーテンなら開閉もラクで、収納の隅々までムダなく使えて便利です。これもデッドスペースの活用のひとつかなと思います。
「L字型のキッチン」もデッドスペースの活用といえるかもしれません。
写真左奥の柱のせいで既製のL字型キッチンが設置できないため、シンク付きのコンパクトキッチンと、低めの作業台(実は洗面用)を組み合わせて構成しました。
なかなか良いアイデアかと思っていたのですが、すでにキッチン(サンワカンパニーの「フィーネ」シリーズ)は廃番で再現は不可能。なかなか難しい……。
■利便性とインテリアのバランスに気をつけたい
こうして振り返ると、狭い部屋を少しでも有効に活用できるようにいろいろと知恵を絞ってきたなあと思います。まあ、僕自身が同じ間取りと広さの物件に住んでいることもあり、狭さが他人事ではないせいでしょう。
いろいろとアイデアをご紹介しましたが、悩ましいのが「便利だからといってあれこれ追加しすぎると部屋がごちゃごちゃしているような印象を与えてしまう」こと。特に賃貸は検索サイトや内見時のパッと見の印象が大事なので、そこだけ考えればインテリアはミニマムに絞ってすっきりさせるのがいちばんなのです。でも、そこだけ追求して住んでから収納に困って暮らしにくいと思われてしまうのも困ります。
設置する収納の色や形に気をつけながら「利便性を付け加えつつインテリアがきれいに見える」バランス感覚を大事にしながら部屋を作っていきたいと思っています。