(590)カイ・クリスチャンセンのNo.42を張り替えてもらった
今回は椅子の張り替えの話。
張り替えといえば、昨年、あきる野に拠点を置く工房「フジタケワークス」の藤武秀幸さんにブルーノ・マットソンのイージーチェアを張り替えていただきました。
これが予想以上に素晴らしい出来で、プロに椅子を張り替えてもらう快感に目覚めてしまい、今年も藤武さんにお世話になることにしました。
お願いしたのはこちらの椅子。
カイ・クリスチャンセン(Kai Kristiansen)の「No.42」です。
カイ・クリスチャンセンはデンマークの家具デザイナー。プロフィールについては現在、復刻生産をおこなっている宮崎椅子製作所の公式サイトに詳しいのでそちらをどうぞ。
【宮崎椅子製作所】カイ・クリスチャンセン
「No.42」は1956年にデザインされた彼の代表作のひとつです。
僕は今から8年ほど前にヤフオクで中古品を購入しました。復刻版ではなくだいぶ昔に本国で製造されたものです。
可動して優しくフィットしてくれる背もたれや、コンパクトでシャープにデザインされた肘掛けが印象的な名作椅子です。
■座面の割れと高すぎる座面も直したい
張り替えを思い立った理由は、生地ではなく座面の破損にありました。
ビンテージ品といえば聞こえがよいのですが、その実は座面に難がある中古品。
3万円くらいの格安価格で購入したものの、座っているうちに座面がギシギシと音を立てるようになり、裏側をのぞいたときには割れ目が目立つほどになっていました。
座面高についても気になっていました。
体格のいい北欧の人々に合わせて作られた椅子は座面も高く(およそ45cm)、僕のように小柄な日本人には高すぎるのです。身長167cmの僕が座るとギリギリで足の裏がつくくらいでしたが、身長163cmの妻が座ろうとすると、かかとが浮いてしまってちゃんと座れません。
どんなにいい椅子でも高さが合わないと座ったときにしっくりこないもので、せっかく座面を直すならば脚もカットしてもらおうと思いました。
■木部の修理と脚カット含めて「29,700円」
以上、2点の改善も含めてフジタケワークスに生地の張り替えをお願いすることにしました。
フジタケワークスに張り替えをお願いする楽しみのひとつが、生地選びについてワガママを聞いてもらえるところ。
今回はいくつかの参考画像を添えて「座面と背もたれを異なる色の生地にしてツートーンにしてみたい」というリクエストを出したのですが、藤武さんが手持ちの中からイメージに合うような生地を準備して迎えてくれました。
前回のように生地サンプルから張地を選んで張り替えることもできますが、椅子を持ち込む場合に限り、藤武さんがストックしている余り生地でリーズナブルに張り替えていただくこともできるのだそうです。
実際に椅子の上に生地を置いて張り替え後のイメージを想像しながら選んでいきます。「目が詰まった生地のほうが北欧っぽいかな?」なんて話しながら選ぶのも楽しいものです。
結局、背もたれをイエロー、座面をグレーの組み合わせに決めました。ストックの生地を使っていただけたので「張り替え作業代」は「15,000円」とリーズナブルに済みましたが、もし生地からオーダーするとそのぶん代金はアップしますのでご注意ください。
ここに「木部修理」と「脚カット代」の「12,000円」が加わって「合計29,700円(税込み)」でした。
木部の加工についても思ったより安いと感じました。
というのも、木部修理については、
既存の木枠を分解したうえで、
それを修理して活かしながら、
座面を新しくしてもらいました。この手間を考慮すると、脚カット込みで「12,000円」はかなり安いと思いますが、いかがでしょうか。
以上、椅子はひとつひとつ形や構造が異なるので今回の料金はあくまでひとつの目安とお考えくださいね。
■ツートーンでモダンな雰囲気に生まれ変わったNo.42
では、張り替え後の写真をごらんください。
見違えました。事前に生地を置いて想像していたつもりが、実際に張り替えてもらうと予想よりもはるかに素敵に仕上がりました。
ビフォーアフター。前の生地もレトロで悪くないんですけど、ツートーンになったおかげでぐっとモダンな雰囲気が出ました。
はたと気づいたのが、この椅子、先日リフォームした山小屋の客間に合うんじゃないの?ということ。試しに置いてみると…
あら、素敵。
期せずしてダークブラウン、グレー、マスタードイエローの組み合わせが一致し、まるでこの部屋のために張り替えたみたいになりました。世田谷の自宅で使うつもりなんですけどね。
見た目だけではありません。
座り心地も劇的に改善されました。
座面を直してもらい、新しくウレタンを入れてもらったおかげで座り心地もよくなりました。
42センチとなった座面高は妻が座ってちょうどいい高さで、かかとまでしっかりとつきます。よかったよかった。
こうして生まれ変わった椅子を見ると「木部の修理も含めるとお金かかるよなあ」なんて二の足を踏んでいたのがバカらしくなりました。もっと早くお願いすればよかったな、と。
座らないで眺めてニヤニヤしたりするのも楽しみのひとつ。
張り替えのいいところは、椅子への親近感が増して、大事にしたい気持ちが強くなるところですね。
実は手持ちの椅子で手を入れたい椅子はまだ何脚かあって、来年もまた一脚お願いしようかなと思っています。