(652)マンションで唯一の和室テイストのインテリアを紹介する

生来の飽きっぽい性格もあり、うちのマンションではリフォームのたびに異なるインテリアの部屋を作ってきました。

そんな中でも異彩を放っているのが、今回ご紹介する和室テイストのお部屋です。

以下、写真はすべてカメラマンの邑口京一郎さんによる撮影です。

間取りとしては他の部屋とほぼ同じなのにインテリアがちがうだけでずいぶん印象が変わるものです。なお、末尾の間取り図をごらんいただければ、部屋のどこから撮影したかがわかるようになっていますので適宜ご参照ください。
■障子を中心に小上がりやココフロアで和室の雰囲気を
この部屋のハイライトは、なんといっても窓に備え付けられた障子です。

和室を感じさせる要素はさまざまですが、その中でももっとも代表的なのは障子だと思います。実は、この障子こそ和室風インテリアの部屋を作ってみようと考えるきっかけでした。

うちのマンションではほとんど手が加えられていない古い部屋には障子が残っていることがあり、それを再利用してみることにしたのです。

障子を残してリフォームするとなれば、障子とそれ以外の場所との調和を考えることが大切になります。そのために壁紙や床材にナチュラル系の木目を取り入れることにしました。

壁かけの鏡、洋服などをかけるフック、アメリカンスイッチなど、うちのマンションの定番アイテムも、ナチュラルな色味の木材でそろえることで和室感を損なわないように気を配りました。

寝室を小上がりにしてココフロアを市松張りに敷いたのも和室らしさを意識した結果です。

うちのリフォームでは寝室とリビングを区切る下がり壁は取り払い、部屋を「広く見せて広く使える」ようにするのが定番なのですが、今回はあえて下がり壁を残して空間を区切ってみました。

パッと見では狭く感じてしまいがちですが、床を上げて下がり壁を残したことで寝室の独立性が高まり「こもり感」が出たとも言えます。

寝室だけは天井にダークグレーを塗ってもらいました。暗い色は室内を狭く見せてしまう効果がありますが、そのぶん落ち着いた雰囲気を出せるメリットもあり、寝室にはありだと思います。
■キッチンや洗面などの水回りはオーソドックスにまとめた

さて、リビングや寝室を和風のインテリアに仕上げた一方、玄関やキッチン、浴室などの水回り部分については「和室感」にこだわらずに設備を選びました。
というのも、築古の日本家屋のリフォームならともかく、もともと日本住宅でもない築古マンションにおいて「本物の和室」をめざそうとすると手を入れなければならない場所も多く、手間もお金もかかってしまうからです。

たとえば、和風の家なら、ヒノキのお風呂や石張りのお風呂がマッチするのでしょうが、そんな高級なものは賃貸マンションではとても用意できません。というか、ボロボロのお風呂をユニットバスに交換するだけでもすごい出費でした。

それに、和風のインテリアを好むからといって、水回りの設備まで和風であることにこだわる人はそんなに多くないのではないのでしょうか。

トイレや洗面も和室風のインテリアを邪魔しない範囲でオーソドックスな設備のほうが日常使いには便利だという考えもありました。

ちなみに、キッチンについては業者さんから余っている新古品を譲ってもらうことができたので選択の余地すらありませんでした。個人的な好みとしてはもう少し大きめのキッチンを設置したかったのですが、キッチンをタダ同然で譲ってもらえる幸運を考えれば贅沢なんて言えません。少しでも便利になればという思いで、うちでは定番となっているIKEAのキッチンツールを壁面に追加しています。

いつもなら玄関のドアポストには印象に残るようなアクセントカラーを入れるのですが、和室風の部屋ということで、土間に張ったタイルと合わせて控えめなグレーを選んでいます。

他の部屋では金属系を選ぶことの多いフック類も、床や壁とそろえてナチュラル系の木材を選んでいます。

水回りや玄関はオーソドックスにまとめたものの、玄関ドアを開けると明るい障子が目に入るので和室の雰囲気はしっかりと感じられます。

そうそう、せっかく和室テイストのインテリアを作ったのだからということで、以前もご紹介した天童木工の低座椅子を置いてみました。

もともと歌舞伎役者の八代目松本幸四郎=初代白鸚(現在も活躍中の二代目白鸚のお父さんにあたる人物)の自邸のためにデザインされたものとあって、和室風インテリアにはぴったりはまります。

こちらの部屋、目論見どおり、和風のインテリアが好みだという入居者さんに見つけていただき、募集から一か月も経たないうちにお申込みいただきました。
以前ご紹介した、柄物を多用したモノトーンの部屋も海外暮らしの長かった方に気に入ってもらってご入居いただいているのですが、他の物件にないインテリアの部屋を作ると、そういう部屋を求めている人はちゃんと見つけてくれるものなのだとわかってきました。世の中の賃貸の多くは最大公約数に寄せ(過ぎ)た無個性な部屋ばかりなので、あるていどターゲットを絞ることになってもインテリアの方向性をしっかり定めて部屋づくりをすることには意味があるんだと思います。
次回はリフォーム前の室内をごらんいただきながら、インテリアが出来上がるまでのプロセスを解説します。
