(2)賃貸大家だって好き勝手に物件を作りたいのです
「山小屋大家日記」と題していますが、本業はマンションの大家です。
世田谷にある古くて小さな賃貸マンションの管理と経営をしています。
近所では毎月のように新しくてピカピカの賃貸マンションが建てられ、うちのような築50年越えの築古物件がどうやって生き残っていくかは悩ましい問題です。
そんななか思いついたのが別荘の離れの活用でした。
築30年近くになる小屋をリノベーションして入居者のみなさんに使ってもらおうというわけです。
「別荘付き賃貸マンション」
ワードだけ見れば、どう見ても高級マンションとリゾート施設の組み合わせしか頭に浮かびませんが、実態は「大家さんの管理するスモールハウスに泊まれますよ」くらいのニュアンスですね。
とはいえ、小屋ひとつリノベーションするのにだって、賃貸マンション一室分を工事するくらいのお金はかかります。
賃貸マンションなら借り手が見つかれば毎月家賃が入ってきますから、数年で取り返せるところですが、「別荘」ではダイレクトな賃料は発生しません。
当然、「マンションの付加価値だけのために、そこまでやるか?」という疑問は内心感じます。
不動産経営の観点から見れば、まあ、バカなことをやっているとしか言いようがないですから。
でも、一度こういうアイデアを思いつくとウズウズしてしまって、ガマンするのが難しい。
お金のことは追々書いていきますが、結局、費用のほとんどを個人で会社に貸し付けて、リノベーション工事を実現させました。
そんな経緯もあって、ふだんの賃貸とはちがった物件にしたいな、と。
世田谷のマンションは商売の本丸でありますから、世間の流行も加味しながら、それなりに広い層にアピールできるシンプルな物件づくりをこころがけてます。
おしゃれさ(という言葉の持つうさんくささは別にしても)を意識しつつ、個性を強く押し出した設備や建材はなるべく避けます。
過度に個性的な部屋は借りる人を選びすぎてしまいますし、日々の暮らしを送る空間がグイグイ主張してくる部屋は大家的には好きではありません。
少なくとも、「ブルックリン」とか「フレンチシャビ―」とか自称しないくらいの節度は持ちたいというか。
賃貸マンションの「色」は住む人がつければいいのです。
でも、週末を過ごすスモールハウスとなれば、話は別。
マンションでの暮らしが日常だとすれば、こっちは非日常です。
インテリアが少々主張しても、遊びとして楽しんでもらえるはず。
クセの強さが鼻についても、たまに一泊するくらいならガマンもきくでしょう。
賃貸マンションの大家だって、たまには持ち家を自分好みにリノベーションするような気分を味わいたいのです。
というわけで、この山小屋は「今回は好き勝手に物件を作ってやる」という野心を胸に秘めて臨んだ結果なのでした。
次回は、もう少々ディテールに踏み込んで、山小屋の内装を紹介します。