(482)マンション入居から退去までの8年半で起こったトラブル

トラブルや失敗

前回、自宅の一部を賃貸に改修した部屋の室内をごらんいただきました。

すっかり新築のように生まれ変わった物件ですが、今年10月に空室になるまでの8年半の間に何度もトラブルに見舞われた部屋でもありました。今回は入居から退去までのトラブルを時系列でまとめます。


■上階からの漏水で部屋がびしょ濡れに……

最初にして最大のトラブルが2015年の12月に発生した漏水トラブルでした。

12月も半ばを過ぎて街に年末の雰囲気が漂うある日、夜11時ごろに電話が鳴って「家に帰ってきたら、キッチンとリビングがビショ濡れになっていて…」と言われ、外出中だった僕は帰宅してすぐさまお部屋に急行しました。

壁に残った漏水の跡

水浸しだったという床はすでに掃除が済んでいましたが、天井から流れた水の跡が見て取れます。

壁にできたスキマ

水を吸ったせいで壁にもスキマができてしまいました。天井のダウンライトも故障して点かなくなっていて、けっこうな被害です。

濡れた食器棚

入居されていたご夫婦がお持ちの家具もこのありさま。すいません……。

大家としては激怒されてもしかたない局面ですが、こちらのご夫婦は本当に人柄のよい方で、怒るどころか「大家さんも年の瀬に大変ですね」と優しい言葉をかけてくれました。持つべきものは良い店子です。

さて、後日の調査で上階のお風呂場に問題があることがわかりました。

劣化した浴室の防水

これは補修時の写真。長らくリフォームをしていなかった古い部屋で在来のお風呂の防水もかなり劣化していました。とくにドアまわりの劣化がひどく、そこから水が漏れてしまったようです。

なぜ急にドバっと水が漏れたかというと、お湯をためるときに浴槽からお湯をあふれさせたかして、排水口だけでは流れきれない水が漏水したのだろうと推測されます。

当時、この部屋に住んでいた方はなかなか対応がシビアで補修工事の調整にはたいへん苦労しました。その話は後日に譲りますが、トラブル時には店子の人柄が大事だと身に染みた出来事でした……。

幸い、急ぎで防水の補修をおこなってくれる業者さんが見つかり、なんとか年内に解決することができましたが、漏水発生からしばらくはいつ次の漏水が起こるかと考えると胃がキリキリと痛む日々だったのを思い出します。


■詰まりが頻発してトイレ本体を交換

次のトラブルが起こったのは2018年のこと。「トイレが流れなくて困っています」という相談を受けました。

ウォシュレット一体型のトイレ

前回もご紹介したとおり、こちらは新しいウォシュレット一体型のトイレを設置したので、トラブルが起きるとは意外でした。

現場を訪れてみると、見事に詰まって便器のフチのちょっと下まで水がたまってしまっていました。当たり前ですが、汚物も流れずに水も汚い状態だったので、入居者の方も恐縮した様子。

聞くところによると、以前からどうも水の流れが悪かったらしく、たまにイヤな臭いがすることもあったそうです。それでも、便器掃除用のトイレブラシで突っついてみればなんとか流れて解決していたのですが、今回はついに流れなくなってしまったとのことでした。

ラバーカップ

このときはトイレ詰まりを解消するラバーカップ(スッポンとか呼んでいるアレ)でなんとか詰まりが解消できたのですが、残念ながら根本的な解決にはならず、半年後くらいにも同じトラブルが発生してしまいました。

業者さんと話したところ、この部屋で採用したトイレは節水機能に優れているのですが、そのぶん流す水の量が少ないんだそうです。不運なことにこのトイレとうちの排水管との相性が悪かったらしく詰まりが発生しているのではないかとの見立てでした。

入居者さんにこれ以上迷惑をかけ続けるわけにはいかないということで、翌年の19年、トイレの交換工事をおこなうことになりました。

トイレを取り外した

既存のトイレを取り外し、

交換後のトイレ

オーソドックスなトイレが新しく設置されました。見た目も機能もノーマルで、過度な節水もなくふつうに水が流れるタイプです。

タイルを張ったトイレ

トイレの高さが低くなったおかげで壁の塗装されていない部分が露出してしまったのでDIYでタイルを張って隠しました。

この交換工事のおかげでトイレが詰まるトラブルは二度と起こりませんでした。これ以来、うちのマンションではノーマルなタイプのトイレを採用するようにしています。


■再び漏水発生!今度の原因は配管の経年劣化

そして、2019年。またもや漏水が発生してしまいました。

今回は、洗面の天井のダウンライトまわりからポタッポタッと水が落ちてくるというトラブルでした。

故障して光が弱くなったダウンライト

現場を訪れた際に漏水は確認できませんでしたが、奥のダウンライトが故障しかけて光が弱くなってしまっているのがわかります。

カバーに残った漏水の跡

ライトのカバーをはずしてみるとたしかに水が漏れたような跡が。

まさか前回と同じく上の階のお風呂から?という疑念も一瞬わいたのですが、このとき上の階はすでにリフォームしてユニットバスに交換済み。

天井に開けた点検口

二度目の漏水ということもあり、天井裏をしっかり確認すべく点検口を設置してもらいました。その結果、排水管の一部に小さな穴=ピンホールが開いていると発覚しました。

天井裏の水道管

こうして見ただけではわかりませんが、フタのような部分(水道管の継手のカバー)に穴が見つかりました。

水道管に開いたピンホール

赤丸で囲んだところがその穴。ここから少しずつ漏れた水がダウンライトを故障させ、天井からポタポタと落ちてしまっていたのでした。

先ほどの漏水は上階の浴室から水が漏れたのですが、今回は配管の経年劣化による漏水ということで、まったく別の原因で二度も漏水が起こったことになります。

補修後の洗面

劣化した水道管のパーツを交換してもらい、ダウンライトも刷新して無事に復旧。今回の漏水では入居者さんの持ち物に被害はなく、補修工事もすぐに済んだのでよかったです。


■照明スイッチが故障するも交換に手間取る

まだまだ終わりません。最後のトラブルは昨年、22年の6月でした。

早朝、入居者さんからLINEがあり「電気が点かない」という連絡を受け、「ブレーカーの故障か?」とあわてて駆けつけると、リビングの照明スイッチが壊れていました

ヨーロピアンスイッチ

壊れたのはオークションサイトで手に入れたヨーロピアンスイッチ。ガチッとした手ごたえがあるはずが、グラグラしてぜんぜんオンオフできません。

既存のスイッチとカバー

デザインも気に入っていたし、カバーもいい具合に古びてきていたので残念です。

新しいヨーロピアンスイッチ

入居者さんも気に入ってくれていたということですぐにデザインの近い代替品を用意しました。

既存のスイッチをはずした

ところが、いざ取り外してみるとスイッチの形は同じでも背面の構造は別物だとわかりました。

最初に設置したものはスイッチの裏側にコードだけが出ている構造だったのに対し、新しく購入したスイッチは背面に出っ張りがあり、埋め込みが必要な構造だったのです。そのせいで、すぐには設置できず、

仮説のスイッチ

ひとまず仮説のスイッチを設置してしばらく我慢してもらうことになってしまいました。

交換後のスイッチ

後日、大工さんに壁の一部を開けてもらってスイッチを埋め込む場所を造ってもらい、ようやく交換完了。

個性的なスイッチって大好きだけど、こういうトラブルがあるのはツライですね。

ナショナルのスイッチ

僕は山小屋や熱海のマンションなど築古物件を複数管理していますが、いくら古くてもパナソニック(ナショナル)製のスイッチが故障したのを見たことがありません

それに対して今回のヨーロピアンスイッチといい、以前も書いたアメリカンタイプのコンセントといい、やっぱり個性的な海外製品はトラブルが起きやすいと言わざるをえません。メンテナンスの手間を考えるとノーマルなパナソニックのスイッチがいいのかなあと頭では思いつつ、また物件をいじる機会があればついつい個性的なスイッチに目が行きがちになりそうな予感があるのが悩ましい。

完成後の室内

こうして振り返るとたった8年半の間に4回もトラブルが起こったわけで、これは築50年のマンションであることを差し引いてもちょっと多すぎますよね。

事実、うちのマンションでも他の部屋でこんなにトラブルが起きたことはありません。ひょっとしたらもともと実家の一部だったスペースを賃貸に転用したせいかもしれませんが、はっきりとした原因はわからないままです。

大家としてはいい勉強ができたと思っていますが、8年半の間に4回もトラブルに遭遇した入居者さんからすればいい迷惑で、そのたびに優しく接してくれたことには感謝の気持ちしかありません

次回は、この部屋を8年半貸し出していくら利益が出たか算出してみます。

アサクラ

大家業。世田谷のマンションと東京西部の山奥にある小屋を管理&経営しています。最近は熱海に購入したマンションの一室をDIYで修繕中。ESSE online(エ...

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