(735)現状から遠くにいかないリフォームのすすめ

インテリア

前回まで四回にわたって元入居者のKさんのリフォームを手伝ったお話をしました。

最終回では分譲と賃貸とでリフォーム費用に大きく差が出ることを実感しましたが、Kさんのリフォームを目の当たりにすることで自分が半ば無意識のうちに選択している方法論のようなものがわかってきました。

それが、「工事前の状態から遠くにいかないリフォーム」です。言い換えると、「現状からなるべく少ない手数で、それなりに見栄えのするインテリアに仕上げる考え方」と言ってもいいでしょう。


■熱海のマンションリフォームのポイントは躯体あらわし

今回は、熱海のマンションを例に取って説明しようと思います。

工事前の室内

こちらが購入直後の室内で、

工事後の室内

こちらがリフォーム後の室内。

ごらんのとおり大きく変わった印象は受けないでしょう。

その理由は、視野の中でもっとも大きな面積を占める壁と天井をほぼそのままにしているからです。僕がこの物件を選んだのも、ここが決め手(のひとつ)でした。

この部屋を見たとき「むき出しの躯体を中心にインテリアを作ろう」と考えました。

この物件は300万円強で購入しましたが、正直に言って、これくらいの金額で買える物件は熱海には山のようにあります。

ですが、その大半は、中途半端なリフォームが施されていたり、残置物がいっぱいあったりして、素人が内見してもリフォームの道筋が想像しにくい物件ばかり。

工事前の室内

その点、この物件は「まるで廃墟」と表現できるくらい潔い状態で、躯体あらわしの壁と天井にはラフな魅力があり、ポテンシャルを感じることができました。この躯体の上から新しい壁や天井を造作するのではなく、この現状を活かすようなリフォームがこの部屋にふさわしいと直感したのです。

リフォームのポイントは具体的にはこんな感じ。

リフォームのポイント

リフォームといっても大がかりな工事ではなく、躯体あらわしの壁や天井に合わせるように周囲を整えてやるというくらいの考え方です。以下、項目ごとにひとつずつ説明していきましょう。


■壁紙を剥がせば、コンクリートが姿をあらわす

まず、コンクリートで造られた壁(や柱や梁)に貼られた壁紙については、剥がす以外に選択肢はありませんでした。

スクレイパーという道具を使ってガリガリと壁紙を削ぎ落していきます。

スクレイパーで壁紙はがし

壁やら梁やら柱やら、ひたすら剥がしまくるだけ。

壁紙はがし

かなり疲れますが、やればやっただけ成果が目に見えるのがこういう作業のいいところ。

壁紙はがし

壁紙を剥がし終えるとコンクリートの質感が現れて、躯体あらわしの壁との統一感が出てきました。


■吹きつけの天井はコンクリートに近いグレーで塗装

続いては天井です。

塗装前の天井

天井には躯体あらわしの部分と吹きつけがされた部分とが混在していました。当初は吹きつけ部分を削り落として躯体を露わにしようかとも思ったのですが、業者さんから「アスベストが含まれている可能性があるのでやめたほうがいい」と言われてあきらめ、コンクリートに近い色で塗装することにしました。

こういう凹凸のある面はローラーが使えないのでハケで塗るしかありません。

天井を塗装する

ただ塗っただけでは塗り残しが出やすいので、ハケを立てるようにして凹部にしっかり塗料が入るように塗らねばならず、かなり大変な作業となりました。

天井塗装後の室内

天井を塗り終えると、ますます室内に統一感が出てきました。


■コンクリートのような表情を感じさせる塗料も活用

次は造作された壁面のリメイクです。

工事前の押し入れ

先ほど壁紙を剥がしたのはコンクリートでできた壁でしたが、こちらは木材で造られた壁と収納。躯体あらわしの壁とならぶと違和感が強いので、建具を撤去して塗装することにしました。

選んだ塗料はこちら。

コンクリートエフェクトペイント

「コンクリートエフェクトペイント」です。色味の異なるグレーを重ね塗りすることで、その名のとおり「コンクリート風に塗装ができる」特殊な塗料です。

施工の詳しい様子については過去の記事をどうぞ。

一色塗っただけだと、

ライトグレーに塗った押し入れ

ただのライトグレーの壁でしかありませんが、

グレーの塗り重ね

コツコツ塗り重ねることによって、

コンクリートエフェクトペイントを塗った押し入れ

コンクリートのようなムラが演出できました。躯体あらわしの壁とならんだときの違和感がかなり軽減されたと思いますが、いかがでしょうか。


■現状から最短距離を選んだ結果がこのインテリア

最後は床材の重ね張りです。

コンポジションタイル

厚みわずか3ミリのコンポジションタイル「グラノーブル」(東リ)を採用しました。

コンポジションタイルをDIY

床の形に合わせて適宜カットしながら、DIYで重ね張りました。

カッターで簡単にカットできるので、フローリングなどとくらべると作業難易度は低め。ただ、床全面に張り付けるのはさすがに骨が折れました。やってもやっても終わらないと言いますか。

コンポジションタイルを張った床

でも、独特のムラのある質感が躯体あらわしの壁にマッチしたのでがんばったかいがありました。

ビフォーアフターの比較

かくしてリフォームが完了したというわけ。

工事後の熱海

半分解体されただけの廃墟のような空間が、ラフな雰囲気を漂わせながらもスッキリとした統一感のある空間に生まれ変わりました。

工事後の熱海

しかし、です。

この空間を造った本人が言うのもなんですが、僕自身がこういう躯体あらわしのインテリアがすごく好きかと言えば、そういうわけでもないのですよね。いや、気に入っていますし、好きですよ。でも「このスタイルでなければ」というこだわりはありません。その証拠に世田谷の自宅のマンション山小屋のキッチンやリビングもまったく異なるインテリアです。躯体あらわしのインテリアについての個人的な愛着はないのです。

むしろ、工事前の現状を見て、そこから最短距離でたどりつけるリフォームを考えた結果がこのインテリアになったというのが正直な感想です。

もし、僕にどうしても譲れないこだわりがあって、白い板壁にブルーでアクセントを入れるような西海岸風のインテリアや、塗り壁とテラコッタの床が組み合わさった南欧風のインテリアをめざしていたら、今回のように簡単にはいかなかったでしょう。下地を整える手間も材料費も跳ね上がっていたはずです。

良くも悪くもこだわりのない自分だからこそ、「この現状なら、あそこを目指そう」と現実的に考えることができ、比較的低予算でインテリアを仕上げることができたのだとポジティブに考えています。

「自分はこれ」という好みをお持ちの方には参考にならない話かもしれませんが、これといったインテリアのこだわりがなく、低予算でちゃんと見栄えのするような空間にリフォームしたいという方にはぜひおすすめしたい考え方です。

アサクラ

大家業。世田谷のマンションと東京西部の山奥にある小屋を管理&経営しています。最近は熱海に購入したマンションの一室をDIYで修繕中。ESSE online(エ...

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