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(734)元入居者さんのリフォームを手伝う④分譲と賃貸の工事予算の差額を実感

お金のこと

引き続き、元入居者のKさんのリフォームをお手伝いした話です。

前回はリフォーム後、別の部屋のように生まれ変わった室内をごらんいただきました。

最終回となる今回はみんなが気になるお金の話。部屋のリフォームにかかった費用の総額を内訳まで含めて検討し、僕が経営する賃貸マンションのリフォーム費用と比較してみます。

結論としては「賃貸マンションのリフォームにくらべ、分譲マンション(持ち家)のリフォームは費用がかさむ」という至極当たり前の話に着地しますが、その差額がどこにあらわれたかについて具体的に考察してみたいと思います。


■リフォーム費用の総額「約920万円」の意味を考えよう

Kさんによれば、最終的な金額は税込みで「約920万円」だったそうです。

リフォーム後の室内

この物件は広さ約38平米。「920万円」が高いか安いかについては人それぞれに考え方があると思いますが、賃貸マンションを営む大家としては、自分のリフォーム費用と比較してみたいという気持ちが湧いてきます。

うちの場合、部屋によって費用をかけた部屋・費用を抑えた部屋などはありますが、水回りも含めてすべて交換した場合のリフォーム工事費用は平均で「約350万円」です。

しかし、うちのマンションの広さはどの部屋も約30平米で、38平米のKさんのお部屋とくらべると8平米ほど狭いですから、両者の額面だけをくらべるのはフェアではありませんよね。

そこで、うちのマンションでかかった工事費用を面積比に応じて掛け算してみると「445万円」となります。さらに、工事をおこなってから多少時間が過ぎているので、近年の建材費や人件費の高騰も考慮に入れ、予算に10%ほど加算した結果、「約490万円」という金額になりました。

それでも、Kさんの部屋のリフォーム費用「920万円」とくらべると、およそ半分強でしかありません。

この差額は一体どこから出てきたのでしょうか?


■賃貸マンションリフォームと何が違うのか?

それを考えるために「920万円」の内訳を見てみましょう。以下、細かい数字にはこだわらず、項目別の大まかな数字です(なお、アサクラの手伝いについては一切の報酬はいただいていないこともお断りしておきます)。

  • 解体:約80万円
  • 大工:約140万円
  • 建具:約80万円
  • 住設機器:約220万円
  • 配管:約70万円
  • 電気ガス:約100万円
  • サッシ:約90万円
  • 内装:約50万円
  • その他:約90万円

この内訳を自分が手がけてきた賃貸物件のリフォームとくらべてみると、以下のような違いが浮かび上がってきます。

  • サッシ:2つの窓をカバー工法でペアガラスの窓に交換した
  • 建具:部屋の広さのわりに建具の数が多く、費用がかさんだ
  • 大工:既存の天井や壁などをすべて解体して新しく造作し直した費用
  • キッチン:分譲マンション用のグレードだと高額になりがち
  • 配管:給湯器がなかったので新規設置のために配管の切り回しが必要
  • 諸経費:駐車代が高額でマンションのルールが厳しく現場管理も大変

これらはすべて、うちのような賃貸マンションのリフォームではかからない(かけられない)費用です。以下、項目ごとに検討し、差額をざっくり算出していきましょう。


■【差額90万円】窓の交換はとにかく費用が高い

まず、なんといってもサッシ=窓のリフォームにかかった「90万円」ですね。

リフォーム前の室内

こちらの物件は、上層階の角部屋とあって窓が多いのですが、写真右に写っている腰窓と掃き出し窓は古いサッシのままでした。

うちも築50年越えのマンションですから身に染みて理解していますが、古いアルミサッシはとにかく断熱性能が低く、夏は暑く冬は寒いのです。

Kさんもこの点については心配していて、お金をかけてでも古いサッシは交換したいと考えました。古いサッシはかなり開けづらかったため、窓をまるごと交換するカバー工法を選択

カバー工法
※熱海のマンションの窓工事の様子

以前もご紹介しましたが、古いサッシの枠に新しいサッシを「カバー」のように取り付ける工法なので、内窓を設ける場合よりも費用はかさむものの、古いサッシがなくなるぶん開け閉めがしやすく、快適に使うことができます。ちなみに、古いサッシの交換には補助金が交付される場合があり、Kさんの工事でもそれを活用したそうです。

リフォーム後の窓

サッシを交換すると断熱に加えて防音性能も向上するので、都心のマンションならば大枚をはたく価値はあると思います。

しかし、賃貸物件を営む身からすると、窓の交換はハードルが高すぎます。100万円近い費用を投じて窓を交換しても、それが即家賃に反映されるわけではありません。生活の質は向上しますが、見た目の印象が劇的に変わるわけでもないこともあり、なかなか投資に見合った家賃アップは望めないのが難しいです。


■【差額70万円】建具の枚数が増えると工事費がかさむ

Kさんのリクエストにもとづいた図面を見て驚くのが建具=ドアが多いということ。数えてみると…

ドアの数拾い

トイレ(②)とリビング(③)は当然としても、洗面空間と廊下を区切る引戸(①)があり、ベッドスペースを区切るための2枚引戸(⑥⑦)、クローゼットのための引き違いのスライドドア(④⑤)があり、計5カ所。ドアの枚数にすると7枚になります。

ベッドルームのドア

中にはサイズが特注のものや、

クローゼットのドア

ポリカーボネートのものも含まれますから、ますます費用はかさみます。

一方、うちのマンションはといえば、

世田谷のマンションのトイレ

新規の建具はトイレのドアくらいでしょうか。

世田谷のマンションの引戸

キッチンとリビングを区切る3枚引戸はもともとあったものを塗装しただけですし、

ロールカーテン

クローゼットなどには建具の代わりにロールカーテンを設置しています。これによって費用はかなり抑えられていますが、部屋の使い勝手が大きく損なわれるわけではありません。人によってはドアよりも使いやすいと考える人もいます。

また、建具が増えれば増えるほど部屋が重たく狭く感じられてしまうのも難点。どんな人が住むかわからない賃貸では「建具少なめで問題ない」と考える人に住んでいただければOKと思っています。


■【差額50万円】大工さんによる造作が多いと費用もふくらむ

続いては大工仕事に支払った費用です。

造作中の室内

Kさんの物件では解体後の躯体の上から新しい天井や壁を造作しています。

リフォーム後の室内

ごらんのとおり、モダンでシンプルな空間を造るには、ここで手を抜くわけにはいかないので必要な出費だったことはまちがいありません。

ですが、マンション大家的には解体後にあらわれた躯体部分をなるべくそのまま使うことで費用が抑えられると考えてしまいます。うちの場合、壁の造作などはなるべく最小限にとどめ、あらわしにした躯体を塗装のみで仕上げることが多いです。

躯体あらわしの室内

部屋によっては天井は塗装すらせずに解体したままにしたところもあるくらいです。


■【差額50万円】キッチンの価格に大きな違いが

住設機器のグレードが分譲(持ち家)と賃貸で異なるのはよくある話です。

キッチン「シエラ」

Kさんの物件のキッチンはリクシルの「ES」(「シエラ」)でキッチン本体とカップボードで「約70万円」(設置費込み、税別)ですが、

業務用キッチン

一方、うちの定番である業務用キッチンなら、レンジフードや置き型のコンロなどを含めても「約20万円」ほどしかかかりません。先ほど建具の話をしましたが、収納部分にドアがあるかオープン収納かも、価格に反映されやすいと思います。なお、写真に写っている吊戸棚は古いキッチンのものを残しました。

ちなみに、持ち家のリフォームで高いグレードが選ばれがちなのが床材ですが、Kさんはこだわりがなかったのでフロアタイルを選んでいます

リフォーム後の室内

最近のフロアタイルは質感も本物と見まごうほどで、賃貸でよく見るクッションフロアのような安っぽさはありません。うちのリフォームでも定番となっています。

もしKさんが無垢の床材を選んだりしていればかなりの高額になったことでしょうから、こだわる部分と妥協する部分のメリハリも大事なのがわかります。


■【差額100万円】給湯器の配管に手間がかかった

ガス給湯器の設置に思ったよりも費用がかかったのも見逃せません。

リフォーム前の室内

この部屋はもともと事務所として使われていて、給湯器自体がありませんでした。となると、新たに給湯器を設置する場所を確保し、新規に配管をおこなう必要があります。この費用はバカになりません。

そこで、給湯器を室外に設置しようとしたのですが、Kさんの物件はマンションの規約で躯体に配管用の穴を開けることは難しく、当初はホールインワン給湯器を検討していました。

リフォーム前の室内

業者さんが知恵を絞った結果、トイレにあった小さな窓を配管スペースとして活用し、ここから屋外に配管を伸ばして給湯器をバルコニーに設置したそうです。

世田谷のマンションの給湯器

一方、うちのマンションのように既存の給湯器を置き換えて交換するだけでいいならば、ここにかかる費用はぐっと下がるのです。


■【差額50万円】都心の工事は駐車場代や現場管理が大変

最後に「諸経費」として計上された「約90万円」の部分。ここには、駐車場経費等の「12万円」、巡回管理を含む現場管理費「36万円」が含まれています。

さすが港区、駐車場代がかなり高額だったそうです。また、業者さんによるとマンションのルールが厳しく現場管理にかなり苦労したそうです。

世田谷のマンションの駐車場

一方、うちのマンションの場合は駐車はタダですし、僕が業者さんと密にコミュニケーションを取っていることもあって、現場管理にかかる費用もたかが知れています


■差額にはそれぞれ意味がある

では、以上の差額をまとめましょう。

  • サッシ:差額90万円
  • 建具:差額70万円
  • 大工:差額50万円
  • キッチン:差額50万円
  • 給湯器まわり:差額100万円
  • 諸経費:差額50万円

以上を合算すると総額で「410万円」となり、先ほど算出した「430万円」(920-490)という差額に近い数字が出てきました。数十万の積み重ねが、最終的に大きな予算の差を生み出したことになります。

ただ、「給湯器まわり」や「諸経費」のように削りようのない出費もあれば、「サッシ」のように体感の向上のための出費もあり、「建具」や「大工(壁や天井の造作)」のように個人の好みやこだわりが反映された出費もあります。

不特定多数を念頭に置かざるをえない賃貸とくらべると、持ち家のリフォームは個人のためにカスタマイズされた空間を創るので、自問自答しながらひとつひとつのポイントを吟味しなければならないのが大きな違いですね。

夜景

今回、元入居者さんのリフォームを手伝ったのは大家として視野を広げる機会となったので本当に勉強になりました。またこんな機会があればチャレンジしてみたいものです。

アサクラ

大家業。世田谷のマンションと東京西部の山奥にある小屋を管理&経営しています。最近は熱海に購入したマンションの一室をDIYで修繕中。ESSE online(エ...

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