(757)マンションの管理規約が紙しかないのでデジタル化してみた

お金のこと

管理規約とは、ひとことでいえば「マンションに住むみんなが守るべきルールブック」のことです。

僕は世田谷では一棟のマンションをまるまる管理しているので管理規約とは無縁な大家だったのですが、4年前に熱海のリゾートマンションを購入して以来、一室を所有する管理組合員として、折に触れて管理規約について考えるようになりました。

今回は表題のとおり、紙しかなかった管理規約をデジタル化した際の顛末をまとめてみようと思います。


■きっかけは国交省による標準管理規約の改正

本題に入る前に大事な背景について説明しましょう。昨年おこなわれた国交省の標準管理規約の改正です。

国交省の標準管理規約の改正の資料

総会決議における多数決要件の見直し」によって、これまで多数決に4/5必要だったのが3/4に緩和されたり、「所在等不明区分所有者の総会決議等からの除外手続き」によって、所在のわからない区分所有者を総会の決議の分母から外すことができるようになりました。

詳しくは、国土交通省のホームページを参照ください。

【国交省】マンション標準管理規約

管理会社の方のレクチャーを受けたかぎりでは古いマンションを維持していくために必要な真っ当な改正が施されているように感じています。

ただ、問題は、こうした改正に合わせて、それぞれのマンションが既存の管理規約をアップデートしなければならないということなのです。

これを正式な形でおこなおうとすると、マンション管理士さんに依頼して古い規約の内容を精査してもらい、標準管理規約に沿うかたちで新しく書き換えてもらわなければなりません。当然ながら、これがけっこうな出費なのです。

悩ましいのが、100戸を超えるような大きなマンションでも、20戸ていどの小さなマンションでも、規約改正の作業量に差はないため費用が変わらないということ。

大型で資金力のあるマンションにとっては「マンション管理士に依頼して直してもらおう」と思えるていどの金額に見えても、予算規模の小さいマンションにとっては重たい費用としてのしかかってくることになります。ましてや、老い先短い築古のマンションともなれば「管理規約の改正にこんな大金を払うなんて……」と及び腰になるのも当然です。


■まずは、紙の管理規約をスキャンしてPDF化する

僕自身も理事として参加している熱海のマンションの理事会でも、今後の対応について議論がおこなわれているところなのですが、そもそもうちのマンションの管理規約は印刷・コピーされた紙の規約しかなく、デジタル版が存在していないのです。

なんでも、通常の分譲マンションとは異なり、このリゾートマンションはエリア一帯を開発した会社によって管理されていたため、管理組合そのものが長らく存在しなかったんだそうです。開発した会社が撤退したあと、必要に迫られて組合が結成され、ようやく管理規約が作られたんだとか。急ごしらえだったせいでしょうか、管理規約の元データはしっかりと引き継がれることもなく、時の流れの中に消えてしまいました。

紙の管理規約

そして、コピーされた冊子だけが残ったという事情のようです。

今の状態のままでは、現行の管理規約と改正された標準管理規約とを見くらべる作業すらも、ディスプレイ上でおこなえないことになります。

これはさすがに不便だろうということで試しにデジタル版を作成してみることにしたのでした。

まずはホッチキスを外してバラバラにした規約をスキャンするのですが、幸いなことにうちの事務所のプリンターには複数枚の原稿をまとめて読み取れるスキャン機能があったので、一気に画像として取り込み、PDF化することができました。

ひとまずPDF版はできたものの、これではディスプレイ上で画像として見ることができるだけで、内容を編集することはできません。これをなんとかテキストデータにしたいのです。


■PDFファイルをwordで開いて、誤変換を手作業で修正

そこで「PDF word 変換」とかで検索してみると、ウェブ上で完結するソフトがたくさん見つかるのですが、だいたい一回かぎりで150円くらいかかり、定期的な利用には月額の会員費も必要になります。

いや、一回150円くらいなら払ってもいいのですが、どのていどの精度で変換できるかわからないのも不安。二の足を踏んでいたところ、ふつうにPDFのファイルをwordで開くことができると知りました。

PDFファイルをwordで開く

PDFファイルをwordで開くように指定すると、

PDFファイルをwordで開く

こんな感じの警告が出ます。「元のPDFとまったく同じ表示にならない場合があります」とのこと。

wordで開いたPDFファイル

続行すると、ふつうに開けました。

変換の精度はまあまあ高そうな感じでしたが、見ていくと誤変換がちょこちょこ見つかります

画像とテキストの比較

上が元データ、下がword変換したもの。

赤で囲ったところをごらんいただければわかるとおり、元データの字間が開いている部分がスペースとして認識されてしまったり、原文にあった「こ」がなぜか抜け落ちてしまったりする誤変換が目立ちます。

これだけなら大した間違いではないと言えなくもないのですが、厄介なのはレイアウトに大きな崩れがある箇所もちらほら散見されること。

wordのレイアウト崩れ

たとえばこの画像の文章は、縦書きに変換されて不自然に表示されてしまっています。

困ったなと思いましたが、全文をコピーしてテキストに貼り付けてから、再びwordに貼り直してやると、多くの不具合が解消されました。もちろんレイアウトが崩れたり、文章の順番が入れ替わってしまったりした箇所もあるのですが、最初にファイルを開いたときとくらべるとだいぶまともになっていて、原文とならべながら目視で誤りが認識できるレベルになった印象です。

ここまでくれば手作業で誤変換をひとつずつ直すことができます。いや、手作業でひとつずつ直す手間がかかる、と言うべきでしょうか。ふつうだったら、より高い精度の変換ソフトを探してやり直すところなのかもしれませんが、自分としてはこれでもう十分でした。

というのも、これを機に管理規約を端から端まで通読するつもりだったので、原文とならべて読み上げながら抜け落ちた文字を補う作業をおこなえばいいと思ったからです。

誤変換チェックをしながら、一文一文しっかり読むことで、「へえ、こんなルールがあったんだ」と気づくこともでき、いい勉強になりました。時間的には2、3時間かかり、それなりの手間だったのですが、満足しています。AIとか駆使できる時代に何をチンタラやっているんだと突っ込まれそうですが、目を皿のようにして読むことで得られたものもあるかな、と。

デジタル化した管理規約

かくしてこれまで紙しかなかった管理規約をなんとかデジタル版に変換することができたわけですが、本当の課題はこのデータを今後どう活用していくかですよね。

小耳に挟んだ話では、AIに現行の規約と国交省の標準管理規約の両方を読み込ませて、すりあわせたバージョンを作らせたなんていう管理組合もあるとのこと。

費用削減を考えるならば、うちのマンションでもそういう試みをするべきなのか、とも思いますが、果たしてそれができる人材がいるのかというと、なんとも……。アナログ人間らしく、ここは両者を突き合わせながらひとつずつ改訂していくべきなのだろうか。

AIにしろ、アナログ作業にしろ、最終的にはどこかでプロの目を通す必要はあるはずで、そのへんのプロセスと予算感も気になるところです。改正に向けてまだまだ悩ましい日々が続きます。

アサクラ

大家業。世田谷のマンションと東京西部の山奥にある小屋を管理&経営しています。最近は熱海に購入したマンションの一室をDIYで修繕中。ESSE online(エ...

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