(335)素人の僕が物件の撮影に失敗して気づいた三つのポイント
ふつうに暮らしていると、人物や動物の写真を撮ることはあっても、物件を撮影する機会なんてほとんどありません。直線で構成された空間を上手に撮影するのは意外に難しいもので、僕も大家になって以来、失敗をくりかえしながら少しずつコツをつかんできました。
今回は僕が実際に経験した失敗を挙げながら、改善方法についてまとめてみます。
■初めて自分で撮影したらひどい写真が撮れた
うちのマンションでは募集に使う室内の写真はすべて友人のカメラマン・邑口京一郎さんに撮影してもらっています。以前、僕が初めてリノベーションを手がけた部屋を邑口さんの写真とともにご紹介したこともありました。
通常、賃貸物件の写真は不動産屋さんが撮影しますが、お世辞にもクオリティが高いとは言えないので、そこにプロの写真が混じると自然と目を引きます。
うちに内見に来てくれる人に話を聞くと「写真に惹かれて内見に来た」とおっしゃる方が大勢います。いくら良い物件を作ったとしてもそれだけではお客さんが来てくれるわけもなく、やはり写真の力は偉大だなと痛感しました。
ちなみに、僕自身はというと、大家を引き継いだ当時、写真についてはまったくの素人でした。恥ずかしながら、当時の僕がデジカメで撮影した写真をごらんください。
玄関からリビングに向かって撮っているのに、この狭さはなんだろう……うちのマンションはおよそ30平米ですから、現実どおりといえば現実どおりなのかもしれませんが、もしこの写真で募集したらどれだけの人が見に来てくれたでしょうか。
比較的アングルの近いプロの写真とくらべてみましょう。
なんというか、もはや別の部屋ですね。
空間の奥行もさることながら、室内を優しく照らす光が素敵です。こうなるとゲタをはかせた感も漂ってくるのですが、そこは宣伝写真ですからウソがなければOKだと割り切っています。
ともあれ、この落差を経験して以来、僕なりにもう少しちゃんとした写真を撮ろうとこころがけるようになりました。前回、完成した物件の室内を写真でごらんいただきましたが、どれも僕が自分で撮影したものです。
プロとは比較にならないクオリティではありますが、昔とくらべればだいぶマシな写真が撮影できるようになりました。
では、僕が体験した失敗(と改善方法)をひとつずつ挙げていきましょう。
■(1)水平と垂直を意識しないで撮って失敗
いきなり基本的な話ですいません。水平と垂直なんてカメラの基本なのかもしれませんが、漫然とカメラを構えてなんとなくシャッターを切るとこんな写真が撮れます。
水平方向で言うと右側に傾いていて、垂直方向で言うと少し上側を向いてしまっています。そのせいで見ていると酔いそうな、なんとも居心地の悪い写真になりました。
昨年、同じ部屋が空室になったのでリベンジ撮影した写真がこちら。
多少はマシになりました。カメラのちがいもありますが、撮影の際に水平と垂直をそれなりに意識しているのが効いていると思います。
ちなみに、プロが撮るとこうなります。
ちがいを挙げるとキリがないのですが、僕が気づいたのは立ち位置のこと。
僕の写真よりも半歩ほど左から撮影していて、それによってメインの被写体であるキッチンが隠れることなくしっかりと写されています。僕の写真を見直すとキッチン右横のカウンターを写したかったみたいに感じます。「何を撮りたいのか」しっかり意識することも大切なのだなと感じました。
まあ、素人ですからプロとくらべて劣るのは当たり前。むしろ、水平と垂直を意識して撮影できるようになった自分をほめてあげたいです。
■(2)広い画を撮ろうとして広角レンズを導入して失敗
さて、撮影を重ねていくと自分のカメラでは狭い部屋を十分に撮影できないことに気づきました。
数年前、当時所有していたiPhoneで撮影した写真です。
反対の壁にベッタリ背中をつけてギリギリの位置から撮ったのですが、天井と床が見切れてしまい、なんだかよくわからない絵面に。
取り急ぎプロの撮った「正解」とくらべてみましょう。
そうそう、こういうのが撮りたかったんですよ!
空間を広く撮るには広角レンズが必要らしいと知り、iPhoneに簡単に取り付けられる広角レンズを購入して撮影してみたのですが……
あれ?なんかふくらんでない?
これもカメラの基本なのでしょうが、広角レンズで撮影した写真はどうしても歪んでしまうのです。レンズを用意して撮れば済む話じゃないとわかって、あのときはここで挫折してあきらめました。
最近になってパソコンにデフォルトで入っていたPhotoshopの「レンズ補正」機能を使うことをようやく覚えました。
グリッドを指標にしながらスライドバーを動かすだけで歪みを取って空間をピシッと直してくれます。垂直&水平方向の変形機能もあるので、そちらも活用して先ほどの写真を補正してみました。
写真の出来は置いておくとして、歪みが改善されたのはおわかりかと思います。なお、前回ごらんいただいた写真もこの機能で補正をおこなっています。
■(3)ピカピカに晴れた日に撮影して失敗
撮影時の光も大事です。
先日工事した物件では空き時間を見つけて何度も撮影を試みたのですが「今日はピカピカに晴れていい天気だな!」と喜び勇んで撮影してみると、思ったような写真が撮れないと感じたことがありました。
たとえばこれ。
窓から入る日光が強すぎて陰影が強く出てしまい、せっかくのヘリンボーンがいまひとつ際立たず、窓際以外の場所の暗さも気になります。
曇った日に撮り直した写真とくらべてみましょう。
光にムラがなく、床の模様もきれいに写っています。
以前、邑口さんが「撮影の日には天気が良すぎないほうがいい」というようなことを言っていた意味が実感できました。
夜の撮影も難しいです。
なんかパッとしませんね。悪い意味で現実感が漂います。
一方、ほぼ同じアングルで薄曇りの昼間に撮影した写真をどうぞ。
昼間に自然光で撮影したほうがいろんなものがきれいに見えます。
僕のような素人にとっては夜間の撮影は避け「曇った昼間に自然光で撮る」というのが最善だと思いました。
■スマホよりもミラーレス一眼のほうが真剣に撮影できる
ちなみに、現在、僕はCanon(キャノン)のミラーレス一眼「EOS Kiss M」を使っています。
もともとiPhone6sで撮影していたのですが、奥さんのお下がりの古いiPhoneなのでカメラの性能はいまひとつで、勉強の意味も込めて思い切って購入したのです。おかげでこれまでよりも良い写真が撮れるようになった気がしますが、技術的な説明は僕の手に負える話ではなく、正直よくわかりません。
そもそも、最新のiPhone(やその他のハイエンドスマホ)のカメラも非常に性能が高いので、iPhoneを新しいものに買い替えるという選択肢もありました。でも、僕にとっては手軽に撮れるスマホのカメラはなんとなくしっくりきませんでした。
「EOS Kiss M」はスマホにくらべて持ち運びにくく気軽に撮影できないのですが、そのおかげで「よし、ちゃんと写真を撮るぞ」という気持ちのスイッチを入れることができます。そういう部分がいちばん大きいと思います。いや、スマホでも真剣に撮れよと言われればそれまでなのですが。
個人的には「EOS Kiss M」は気に入っているので、これからも物件撮影に活用していこうと思います。
これは最近購入した物件の写真。海が見える築古のリゾートマンションなのですが、中身はボロボロなのでこれからDIYで手を入れていこうと思っています。その記録をきちんと残すためにも、もっと上手に撮影できるようになりたいな、と。