(440)リノベーションで家賃3万UPした部屋を紹介する
先代の大家時代に場当たり的なリフォームが施されたおかげで住みにくい部屋になってしまい、家賃も下がってしまった部屋。
利便性とデザインを両立させて家賃アップをめざすべく、ほぼまるごとリノベーションしました。
工事完了後の間取り図はこんな感じです。
もともとガスコンロの前にあって料理を邪魔していた洗濯機置き場を移転し、キッチンをL字型に。狭いうえにドアを開けると向かいの壁にぶつかるトイレはドアを前方に変更し、便器を新調しました。野暮ったい一体型洗面も新しい洗面ボウルと交換。ぐっと暮らしやすい部屋になりました。
今回は、完成した室内をごらんいただきます。写真に付した番号は末尾の間取り図に対応していますので適時ご参照ください。
では、リビングからまいりましょう。
既存の天井は解体し、躯体あらわしにしました。いつもなら白く塗装するところを無塗装で仕上げてみました。
無塗装ならではのラフな雰囲気には塗装にはない魅力があります。
床にはコンポジションタイル「マチコV」を張り、グレーの天井と床で白い壁をサンドするインテリアに仕上げてみました。
さらに、リビングの一角にはアクセントカラーとしてミントグリーンを。
グリーンを背景にすることでホワイトのスイッチパネルやミラーが際立ちました。
このグリーン、実はトイレの床に敷いたタイルの色「セラドン」から着想を得たもの。
背面の壁はグレー、床には「セラドン」のタイルと2色のアクセントカラーを用いましたが、どちらも優しい色合いのせいか、落ち着いた雰囲気に仕上がりました。
洗面は腰高まで壁タイルを張り、上半分はグレーで塗装。普及品のスクエアタイプの洗面ボウルを設置しました。大きめのミラーキャビネットを設置したので収納力もあります。
キッチンには業務用キッチンを採用。シンク台とコンロ台をL字型に組み合わせて構成しました。
壁面にはイケアの収納シリーズ「グルンドタール」を設置しています。僕も自宅で愛用していますが、これがあるだけでぐっと作業がラクになります。
既存の設備を残したユニットバスは、一昨年にリフォームした部屋と同じくシャワーヘッドやフックなどを交換し、小物を追加してリニューアルしています。
こちらのお部屋、昨年の9月中旬に家賃12万円で募集をかけたところ、申し込みも複数いただき、一か月ほどで新しい入居者さんが決まりました。インテリアもかなり気に入ってもらえたので、がんばったかいがありました。
もともと9万円だった部屋が12万円になったということは3万円の家賃アップです。うちの築年数と立地を考慮すると上出来だと思います。
そのぶん費用もかなりかかりました。工事の総額は「約320万円」。ユニットバスとキッチンの吊戸棚以外はすべての設備を交換しましたし、給湯器(2009年製)とエアコン(2013年製)も更新しましたのでほぼフルリノベーションです。30平米の部屋ですから平米単価も10万円を超えました。折からの材料費&人件費の高騰もあって、僕が大家を引き継いだ8年前とくらべると10%くらい増えた印象でしょうか。
築50年を超えたマンションにこんな大金をかけるなんて……と思われる方もいるでしょう。
僕としてはリフォームの総額をとらえるにあたって新家賃と旧家賃の差額である「3万円」を基準にして考えるようにしています。「320万円」を「3万円」で割ると、およそ107か月=約9年分となります。つまり、これから9年間、家賃を下げずに借り続けてもらえれば、十分見合う投資になるのではないかと思うのです。
9年というと長いように聞こえますが、僕が大家を引き継いだのが8年前の2014年のことでしたから、個人的にはあっという間です。当時、300万円ほどかけてリフォームした部屋は、8年経った現在も古びることなくそのままの家賃をキープしてくれていますから、今回投資した費用はこれから9年かけてゆっくり取り返していければ、と思っています。
次回はお部屋紹介の続編。照明やスイッチなどのディテールについてご紹介します。