(752)【日刊Sumai再録】「初めての北欧の椅子」を「サボファニチャー」で選ぶ
先日、北欧の椅子の専門店「サボファニチャー」のエントランスにタイルを張らせてもらった話をいたしました。
思えば、小松さんとのお付き合いもかれこれ10年以上になります。オープン当初は椅子にほとんど関心がなかった僕ですが、小松さんの影響もあって今では椅子が大好きになりました。
2020年には「日刊Sumai」の連載でお店を取材した記事も書かせていただいたのですが、「日刊Sumai」の廃刊とともに現在は読むことができなくなってしまいました。個人的に思い入れのある取材だったので、今回、小松さんの許可を得てこのブログに再掲載させていただくことにします。
なお、取材時から6年を経て、お店に置かれている椅子もずいぶん入れ替わりました。この記事で紹介している椅子が店頭にない場合もありますので、お目当てがある方は来店前にお店にご確認いただくようお願いいたします。
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「初めての北欧の椅子」を専門店「サボファニチャー」で選んでみよう
日本でも定番となった北欧インテリア。とりわけ名作と呼ばれる椅子の数々は有名です。
今回は、北欧の椅子の専門店「サボファニチャー」で「初めての一脚をどう選んだらいいのか」聞いてみました。
■巨匠ウェグナーの名作椅子の数々がならぶ店内
「サボファニチャー(Sabo Furniture)」は北欧の椅子を専門に扱うお店です。

店主の小松義樹さんは北欧で家具製作を学んだ経験を活かし、自分が本当に良いと思える椅子だけを取り扱いたいと2014年にこのお店をオープンさせました。
わずか25平米の小さな店舗ですが、選び抜かれた美しい椅子がならびます。

インテリアの世界では定番の北欧デザインですが「気になるけれど自分には敷居が高いかも」という方もいるのではないでしょうか。
かく言う僕も、初めて「サボファニチャー」を訪れたときは「北欧デザイン」について何も知りませんでした。

でも、そんなビギナーも心配ご無用。小松さんが穏やかな口調で基本から丁寧に説明してくれます。
「初めてお店にいらっしゃった方には、まず「この椅子、ごぞんじですか?」とお声がけさせていただくことが多いですね」というのが「Yチェア」。

背もたれを支える「Y」のデザインで、数ある北欧の椅子の中でも1、2を争う知名度を誇ります。
手がけたのは、生涯で500脚もの椅子をデザインしたというデンマークの巨匠、ハンス・J・ウェグナー。
家具製作を学んだ小松さんがウェグナーの椅子にこだわるのにはわけがあります。
「家具づくりでは「どうやって耐久性を担保できるようなデザインをするか」がすごく重要です。ウェグナーは椅子の構造を知り尽くした人で、見た目だけではなくて座り心地や耐久性にもすごく重きを置いて椅子をデザインしています。だから、何十年も使い続けることができるんです」

たしかに、ウェグナーの椅子からはシンプルでムダのない機能美を感じます。
■とにかく座って試してくらべてみるのが大事
初心者はどうやって椅子を選んだらいいんですか?
「とりあえず座っていただくのがいちばん重要です。一脚一脚座り心地がちがうので、なるべく多くの椅子に座ってくらべていただいて、どれがいちばん自分の体にしっくりくるかを試してください」

人気の「Yチェア」を目当てに来ても、他の椅子を選ぶ方もいらっしゃるとか。
「「Yチェア」は独特のデザインを気に入られる方が多いんです。でも、「背中の当たりが気になる場合には背もたれが幅広な椅子を選ぶといいですよ」とか、「長時間座る場合には張地の椅子のほうがお尻には優しいと感じるかもしれません」ということも説明するようにしています」
たとえば、インタビュー中に座らせていただいたこの椅子。

背もたれが背中に優しくフィットして、とてもいい座り心地でした。

「CH33という椅子です。後ろ姿もきれいな椅子で、女性にも人気があります。長時間座るなら、やっぱりウレタンのクッションがおすすめです」
サボファニチャーでは、どういった用途でどれくらいの時間座るのかを細かくヒアリングしてくれるので、遠慮せずにどんどん相談しましょう。
■素材の組み合わせ次第で印象はガラリと変わる
木材や座面をどう組み合わせたらいいかもビギナーが迷うところ。
展示品や素材サンプルを見ながらじっくり選びましょう。

「このPP68とPP58も、すごく人気がある椅子です。PP68がペーパーコード、PP58がウレタンクッションで、座面を支える木材の形状は異なりますが、背もたれなどのかたちは同じです。仕様によってガラリと印象が変わります」
こうやってくらべるとちがいがわかりやすいですね。

「このPP68は色の薄い木材にペーパーコードを組み合わせて単色に仕上げました。「ザ・北欧」という感じですね」

「個人的には座面と木材の色でコントラストをつけるのが好きです。張地にお店のカラーでもあるブリティッシュグリーンを選んでみました」
木材と生地の組み合わせを考えるのも楽しいですね。
「最近は「北欧=明るい木材」という印象をお持ちの方も多いです。たとえば「タンバリンハリンダル」と組み合わせたりすると、モダンで女性らしい椅子になりますよ」

生地が変わっただけで、このちがい。
小松さんによれば、北欧の椅子だからといって必ずしも北欧のインテリアにこだわる必要はないそうです。

このCH88は「ブルックリンスタイルを意識してオーダーした」んだそうです。
黒く塗装されたフレームと濃い色の背もたれの組み合わせにブルックリンテイストを感じます。
「北欧の家具は木材の使い方がうまいので和室にも合わせやすいですし、旅館に置いてあったりすることもありますよ。カスタム次第で、どんなお部屋のインテリアにも合わせられます」
■僕が選んだ「サファリチェア」は税込みで約10万円!
実は、僕も最近「初めての北欧の椅子」を「サボファニチャー」で手に入れました。
ウェグナーよりも一世代前のデザイナー、コーア・クリントによる「サファリチェア」です。

名前のとおり、もともと屋外で使われることを想定して作られ、分解して運ぶことも可能だという個性的なデザインが、初めてお店を訪れたときから気になっていました。
お値段が「13,1000円」ということで購入に踏み出せないでいたのですが、メーカーの仕様変更に伴い展示品が30%オフのセール価格になったことに背中を押され、妻と相談して思い切って購入しました。

税込みだと「10,0100円」。
キャッシュレス決済による5%還元(※註:当時のキャンペーン)を含めると9万5千円強でしたが、高価な買い物にはちがいありません。
北欧の人たちって、こんなふうに家具にお金をかけるのが当たり前なの?なんて素朴な疑問も湧いてきます。
■スマホより椅子に10万かけるほうがトク?
小松さんによると、デンマークでは物価は日本の倍くらいなので、10万円の椅子でも半額くらいに感じるのではないか、とのこと。
当然、人件費も高いのでそのぶん椅子の価格も高くなり「日本で作られて日本で売られている家具よりも、どうしても高くなってしまう」んだそうです。人件費の安いアジアで量産された家具と比較すると言わずもがなですね。

「でも、北欧の椅子がべらぼうに高いとは思わないんです。携帯電話とかいわゆるガジェットと言われるものって、新しいモデルに買い替えると10万円くらいかかりますけど、2年から3年でまた買い替えなければならないですよね。どんなにもっても5年くらいがマックスです。でも、ウェグナーの椅子は何十年経ってもずっと使い続けることができます。はたしてどっちが出す金額に見合ってるのかって思うんです。あくまで個人的な意見ですけどね」
言われてみると、妻が最近買い替えたスマホはサファリチェアよりも高価でした。

う~む。今やスマホは僕たちの生活に欠かせないものではありますが、椅子だって毎日座る生活の一部。
同じくらいの予算をかけてもおかしくないし、一生ものの椅子が手に入るなら得とすら言えるのかもしれません。僕もせっかく手に入れた「サファリチェア」を大切にしていきたいと思います。

みなさんもサボファニチャーで一生ものの一脚を探してみてはいかがでしょうか。
東京都目黒区緑が丘2-6-13 営業時間:11:00~19:00 定休日:水曜 電話番号:03-3725-0886
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2026年現在、店内のラインナップはだいぶ様変わりしましたが、椅子選びの基本については、今でも十分に参考になるかと思います。
ですが、僕が10万円を切る価格で購入したサファリチェアも現在では定価で約20万円ですから、セール価格という部分を考慮に入れても1.5倍ほどに値上がりしたことになります。やはり物価高騰に伴う価格の上昇は否めませんね。
さて、せっかくの機会ですので、2026年現在の「サボファニチャー」でイチオシの一脚を最後にご紹介しておきましょう。

ウェグナーが1962年にデザインしたラウンジチェア「CH290」です。椅子好きの方ならごぞんじの名作で長らく「ゲタマ社」で生産されていましたが、同社が廃業したことでカール・ハンセンにライセンスが移りました。
定番とも言える椅子ではありますが、注目すべきは生地選び。

Kvadrat(クヴァドラ)の「Serpentine(サーペンタイン)」という生地。クヴァドラは北欧のブランドですが、メキシコにインスピレーションを受けてデザインしたんだとか。
「ザ・北欧」という印象ではなくちょっと捻りのきいたコーディネートで、小松さん曰く「サーペンタインを張ったCH290の実物が見れるのは日本ではうちくらいじゃないでしょうか」とのこと。

生地選びで椅子の印象がガラリと変わる好例を見た気がしました。テラコッタを敷き詰めた部屋なんかに置いてもかっこいいかもしれませんね。
座り心地はというと、しっかりと固めのクッション。幅広な肘掛けに手を置いたとき、手のひら全体で感じるオークの手触りがたまりません。

小松さんによれば、以前はスプリングだった座面は、「カール・ハンセン」に移ってウェービングベルトになったんだそう。

ちなみに、工場生産による量産体制で「ゲタマ社」時代よりも価格がやや下がっての提供となっているものの、価格は「税込み518,100円」からで、先ほどのクヴァドラのサーペンタインを選ぶとさらに高額になります。
なかなか手が出せない価格ではありますが、品質は折り紙付き。まずはお店で実物に触れるところから始めてみてはいかがでしょうか。


















